書評

【書評】『世界のエリートが学んでいる哲学・宗教の授業』(佐藤優著)

 

こんにちは!ナミ@猫好き投資家です。

 

元官僚の作者、佐藤優氏による『世界のエリートが学んでいる哲学・宗教の授業』を読みました。

 

仕事で1年半アメリカに滞在していた時に感じたのは、アメリカのニュース番組は諸外国のニュースも広く取り上げていること。それに比べ、日本のニュース番組では日本の出来事が中心で、関心を集められそうな一部の海外ニュースしか報道されていない印象です。

 

ナミ
ナミ
これまで上っ面しか知らなかった世界情勢について、根本から考える良いきっかけを与えてくれるような本でした。

 

仕事で海外の人と会話をすると、相手が自国以外の文化・時事問題・歴史などについて本当に良く知っていて、いかに自分が知識不足かを感じます。

彼らは知っているだけでなく、きちんと考えて自分の意見を持っている。そこに私は一番感銘を受けました。そんな私のように、海外の人との付き合いがあり、”日本以外の国”についても学びたい人にとって、手始めに読むのにぴったりな本でした。

 

本のタイトルを見ると少し難しそうなテーマですが、著者の佐藤優氏と聞き手役の小峰氏の対話形式で構成されており、読みやすかったです。

 

内容紹介

 

「アメリカやヨーロッパ、ロシア、イスラエルなどの大学では、文科系、理科系にかかわらず、哲学と宗教について学ぶ。なぜなら哲学と宗教は、人間が生きていく上で不可欠な基本原理だからだ。日本の政治、経済、マスメディアなどで活躍するエリートには哲学と宗教に関する知識と教養が欠如している。この点を改善することが日本の社会と国家を強化するために有益と思う」。

この著者の問題意識によって実現した、筑波大学の連続講義を紙上再現。

「他者との関係がモノのように見えてしまう『物象化』が常識を生み出している」「仏教が考える世界の成り立ち――世界にはまず、見に見えない『業』があった」「バチカンは200年から300年のスパンで戦略を練る ベネディクト16世の生前退位もその一環」……。

「超優秀」な学生たちが覚えた熱烈な知的興奮を、是非味わっていただきたい。

  • 今の日本の論壇は、それぞれが勝手に勝利宣言を発する「阿呆の画廊」
  • アメリカが牛耳る20世紀後半は、哲学的に見ると18世紀
  • ファシズムとナチズムの違い ファシズムは「皆で支え合い、仲間を束ねていく」という発想
  • 物事の本質をつかむ、神学の「類比」の思考

 

Amazonの作品紹介ページより引用

 

本書の中で特に印象に残ったポイント
  1. なぜ竹島問題はこれほど解決が難しいのか
  2. 日本の論壇は「阿呆の画廊」
  3. 「ファシズム」と「ナチズム」の違い

 

(1) なぜ竹島問題はこれほど解決が難しいのか。

 

日本と韓国の関係が悪化した理由の大きな一つとして竹島の問題を思い浮かべる人も多いと思います。

なぜこれほどこじれ、深刻な問題になっているのか。

それは、日本人が竹島問題を外交問題と考えているのに対し、韓国側では一種の神話のような捉えられ方をしているいわば、日本人にとっての天皇制のようなものだ、と。

 

ナミ
ナミ
歴史的事実など云々以前に、両者で竹島に対する根本的な認識に差があったんですね。

 

本書ではさらにナショナリズムについても説明されています。特に印象的だったのは、「ナショナリズムは高めることは出来ても、緩めることは出来ない」ということ。

 

私自身、事あるごとに「日本人」を大きく取り上げがちなところや、日本で生まれ育っても、国籍を基準に「在日」と呼ばれる人がいることに、やや違和感を感じていました。先日のブラックホール撮影成功のニュースでも、いちいち日本人や日本技術にフォーカスした報道の仕方が不思議だったんです。

 

ナミ
ナミ
ナショナリズム…難しい。

 

(2) 日本の論壇は「阿呆の画廊」

 

「阿呆の画廊」とはなかなか強烈なワードですが、どのような意味なのでしょうか。

「僕は、Aが絶対に正しいと思う」

「いやいや、私のBが、絶対に正しい」

これは、「神々の争い」と言われています。

神々の争いは調停することができません。

いま日本の論壇に活気がなく、つまらないのは、そのほとんどが「阿呆の画廊」か、「神々の争い」になっているからにほかなりません。

相手の論を踏まえて、自分の見解を付加していく。これがクリティークの基本形と言いましたよね。いまの論壇にはそれが欠けているように思われます。

まるで空中戦です。常に勝利宣言を発して、次の場所に行くのが、空中戦です。(P47より引用)

 

よく「日本人はディベートが苦手」といわれていますが、国会の議論やテレビの討論番組を見ても、相手を言い負かす・自分に主張を通そうとする人が多いように思います。

本来ディベートとは、相手の意見を踏まえて自分の意見を付加していくことでテーマの議論を展開していくことではないでしょうか。

 

ナミ
ナミ
10人いれば10通りの考え方があるのは当然のことで、議論を展開していくにはまず相手の意見をリスペクトして真摯に耳を傾けることが必要だということですね。私も会社の会議で、議論=勝ち負けと無意識に考えて進めていたこともあったので、少し反省…

 

 

(3) 「ファシズム」と「ナチズム」の違い

 

単純に両者を似たようなものと考えていましたが、両者の思想の根底にあるものや指導者には大きな違いがあることが分かりました。

 

基礎教養が乏しいヒトラーは、ユダヤ人陰謀説を唱える怪しげな本をたくさん読むうちに、本当に世界はユダヤ人に支配されていると思い始めます。それを声高に唱えているうちに、社会的に閉塞感にあふれたドイツでヒトラーが総統として担がれていったそう。国民は全て総統のものであり、健康でない国民は全員死ぬべき、強い者が正義というとてもシンプルな思想ですね。

 

一方ファシズムを唱えたムッソリーニは非常に優秀で、5ヶ国語を話し社会や経済に関する知識も豊富。資本主義、共産主義共に抱える問題を非常にロジカルに分析することで、両者の欠点を補完するファシズムを産み出しました。ファシズムで重要視したのは「国家のためかどうか」というポイントだそう。

 

そのため、ファシズムはナチズムと異なり、「ユダヤ人だから」「女性だから」という単純な属性で人を差別したりはしない。「国家のためには優秀な女性を最大限活用しなければならない」と、女性の参政権を認めたり、女性の軍の将校を登用したそう。

 

ナミ
ナミ
ファシズムもナチズムと一緒の過激な思想とばかり思っていましたが、現代にも生きる考え方も含まれていたということにびっくりしました。

 

最後に

 

ここで取り上げた以外にも、「2013年に生前退位したローマ教皇、前回の生前退位はいつだった?」「なぜ日本では憲法9条改正が遅々として進まないの?」など、最近の時事問題に触れながら問題の本質にある哲学的・宗教的な分析が興味深かったです。

 

世界を舞台に生きていこうとする以上、世界の人たちはどのような思考・見方で物事を考え、捉えているのか。それを知ることは欠かせません。

本書は、そんな時の一歩に最適な本でした。

 

 

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