書評

【書評】『交渉の武器』(ライアン・ゴールドスティン著)

 

ナミ
ナミ
私は仕事柄、ビジネスの交渉の場に同席することがあります。これまでは同席のみでしたが、中堅と呼ばれるポジションになり、交渉を自らリードする機会も出てくるだろう、と思っています。一方で、これまでの人生でディベートだの交渉だのを訓練する機会は一度もなくとっても心もとない・・・

ということで、「世界で最も恐れられる弁護士チーム」と言われる弁護士事務所の東京オフィス代表を務める敏腕弁護士がまとめた本書『交渉の武器/交渉プロフェッショナルの20原則』を読みました。

 

突然ですが、「交渉」とは何でしょう?

 

夫
そんなのは簡単さ!利害の対立する当事者たちが話し合いで合意点を模索しあうことだよ。

 

ナミ
ナミ
いやいや、相手を言い負かせて自分の要求を飲ませることじゃない?

 

本書では、「交渉」を以下のように定義づけています。

交渉とは、「自分の目的」を達成するための手段である。(本書P27)

 

補足すると、「たしかに、交渉とは合意をめざして行われるものであるが、合意を最終的な目的(ゴール)としてしまった者は、交渉において必然的に不利な立場に立たされてしまう」のだそう。

 

最終目標を「相手との合意」としてしまうと、相手から不合理な要求を受けたり全く相手が譲歩しない場合、心理的にこちらが容易に譲歩してしまい、結果的にこちらに不利な結果に終わってしまいやすい、ということです。

 

夫
それじゃぁ、僕みたいな考え方で交渉に臨むと、不利な条件を押し付けられてしまう可能性が高いんだね・・・

 

では「交渉=相手を言い負かすこと」かというと、実はそうでもないのです。

 

ただし、ここで勘違いをする人が多い。

「勝つ」ことを、相手を打ち負かすことだと勘違いしてしまうのだ。

(略)

むやみに攻撃的になれば、相手は態度を硬化させるだけだからだ。相手の譲歩を引き出すどころか、より手厳しい抵抗を受ける結果を招くだけである。

そもそも、交渉とは「自分の目的」を達成するために行うものだ。「相手に勝つ」「相手を打ち負かす」ために交渉を行うのではない。「自分の目的」を達成したときに、「交渉に勝った」ことになるのだ。(本書P35)

 

つまり相手を言い負かしたところで、自分に有利な条件は得られず、むしろそのあとの交渉がしにくい状況になってしまう、というのです。

このように、根本である「交渉とは?」という点をきちんと理解しておかないと、意義のある交渉を行うことも自らに有利な条件を引き出すことも、かなり難しくなります。





本書では、交渉をのぞむ上で必ず理解しておくべき原則を20個上げています。いずれも、交渉のテクニックというよりは、交渉そのものの正しい認識や心構えについて説明されています。

 

ナミ
ナミ
中でも私が特に大切だな、と感じたポイントは、「まず『交渉決裂ライン』を決める」というポイントです。

 

交渉のプロセスに「譲歩」は不可欠だ。

利害が対立している両者が、一切の譲歩なく合意に至るのは不可能。(略)

そのためには、漠然と「あれも大事、これも大事」と考えるのではなく、自分が求めることの優先順位を明確にしておかなければならない。重要なのは、「絶対の譲れないもの」と「譲歩してもよいもの」を切り分けることだ。そして、「絶対に譲れないもの」を守るために、「譲歩してよいもの」を「譲歩カード」としていかに活用するかを考える。これが交渉戦略の基本なのだ。

だから、まず「交渉結ライン」を決めることから始めるべきだ。(本書P54-55)

 

私は法務担当として交渉に同席するのですが、特にビジネスの条件についてはしっかりと事前に社内の担当者に確認することの大切さを改めて感じました。

最近大きな契約案件を任されたのですが、前任の法務担当者は英語が苦手だったので、契約条件の交渉ではなく英文契約の内容の精査や交渉の席での英語でのコミュニケーションに気を取られてしまい、契約条件に関する事前の確認がおそろかになってしまった結果、こちらに不利な内容になっていました。

 

ナミ
ナミ
相手がどんなに小さな会社であっても、容易な交渉はきっと無いでしょうから、個別の事情や状況に惑わされず、しっかりとこちらの交渉の目的を忘れないようにする姿勢が大切ですね。

 

本書では上記以外にも、「相手に多くを語らせた方が有利に交渉を進められる」「交渉は『少数精鋭』が鉄則である」など、交渉における基本中の基本のルールが説明されていて、交渉に不慣れな人・交渉技術を上げたい初心者がまずは読むべき一冊だと思います。




著者の紹介

ライアン・ゴールドスティン(カリフォルニア州弁護士)

ハーバード法科大学院修了。ハーバードの成績トップ5%が選ばれる連邦判事補佐職「クラークシップ」に従事。

アメリカの法律専門誌で「世界で最も恐れられる弁護士チーム」に選出された、クイン・エマニュエル・アークハート・サリバン法律事務所に入所。同事務所のパートナーに就任後、カリフォルニア州の40歳以下の優秀な弁護士に贈られる「Top 20under40」を35歳で受賞。

その後、同事務所の東京オフィスを解説し、日本に常駐するとともに、日本オフィス代表に就任。(本書の著者紹介から抜粋)

 

本書の冒頭で、著者が日本に興味を抱くきっかけになった出来事や日本への深い尊敬の気持ちが詳細に書かれていました。

 

ナミ
ナミ
本書の「はじめに」でも書かれていた通り、日本人はとりわけ和を重んじるばかりに、不利な条件を押し付けられやすい、と言えるのかもしれません。

空気を読む文化からも感じられますが、自分の気持ちを言語化して伝えることよりも、相手に察してもらうことを期待することが多く、私自身もそんな考え方で生きてきました。

そんな私が交渉の場で日本・海外のやり手たちと渡り合っていくために、この本をきっかけに、交渉について学んでいこうと思います。

%d人のブロガーが「いいね」をつけました。